第16回:加計呂麻島での休日|女子的リアル離島暮らし
YADOKARIをご覧の皆様、こんにちは。小説家の三谷晶子です。
今回は加計呂麻島での休日、どのように過ごしているかをお話したいと思います。
映画館やバーどころか、銀行さえもない島
加計呂麻島では第1回にも書いたように、映画館やバーなどはおろか、銀行やスーパー、コンビニすらありません。あるのは小さなタバコ屋兼雑貨店と郵便局、ペンションや民宿がちらほらと数軒の飲食店のみ。
都会にいた頃は遊ぶと言えば、友人と食事に行ったり、映画館や美術館に行ったり、どこかで行われるパーティに行ったりだった私ですが、夜に遊びたいのならフェリーを使って海を渡り、奄美大島に行くしかありません。
けれど、加計呂麻島には豊かな海と山があります。
ヨットを出して海で遊ぶ
友人たちが訪れると大抵お願いするのがヨットでの海のガイドを行っているBLUE WATER ADVENTURE’S 。港からヨットを出し、その日のおすすめのシュノーケルポイントに行き、SUP(スタンドアップパドル)やシーカヤック、釣りなどありとあらゆるマリンレジャーを楽しませてくださるところです。
エンジンを使うのは港から出るときのみ。風と波だけで動くヨットは、普通の船とは違う「自分が海の上にいる」ということをダイレクトに感じられるなかなか得難い経験で、海上に出れば聞こえるのは波音と風の音だけ。
風や波の動きに逆らわないからか普通の船では船酔いしてしまう人も平気だったりするのだとか。休憩ももちろんヨットの上なので、一日海上にいる感じ。海を満喫するのにぴったりだと思います。
カヤックで無人島に行き遊ぶ
そして、先日初めて行ったのが、シーカヤックで無人島に行きシュノーケル、その後、無人のビーチに行ってキャンプをすること。
シーカヤックのガイドをお願いしたのは海辺のさんぽ社さん。ガイドの柳沢大雅さんとは普段もよくご一緒させていただいております。
東京からの友人二人と加計呂麻島在住の友人、計5人で荷物をカヤックに詰め込みまずは無人島へ。しばらくシュノーケルを楽しんでから陸からは行けない無人のビーチに上陸。
テントを張り、薪を集めて焚き火をし料理を開始します。
出来上がったのは二時間にわたって煮込んだ鶏と野菜の煮込みとパエリア。
持ち込んだお酒を片手に海を照らす月と星を見ながら語り合い。
そして、またカヤックで無人島へ行きシュノーケルをしました。
家で行われる飲み会、映画鑑賞会
ほか、飲食店がほとんどない加計呂麻島ではお酒を飲むのは大抵、誰かの家。魚釣りが得意な人は魚、猪猟をしている人はお肉などを持ち寄り、酒席が始まります。お酒も各自が持ち込み。奄美諸島でしか作れない黒糖焼酎はもちろん、Iターン者は地元の名物のお酒を持ち寄ったり、ワインや日本酒などをお取り寄せしたり。
星や月が綺麗な日は外に出て夜空を眺め、朝まで飲んだ日は「頭すっきりさせようか」と言って朝から海に入ったりします。
最近では家にプロジェクターを購入した人の家に集って映画鑑賞会をしたり。
都会と比べてお店は確かに少ないですが、その分、自分たちで何かを持ち寄ったり作ったりして遊ぶことが当たり前なのです。
東京にいると、なかなか友人宅に集って遊んだりすることはなかなかないものではないでしょうか。
同じ東京と言えど場所によっては1時間以上離れていたりするものですし、仕事によって休日や生活スタイルが全く違う。
私の場合、東京にいるときに友人と会うのは大抵、新宿や渋谷、六本木などの繁華街で夕食を食べることがほとんどでした。
それはそれで楽しいものですが、こうして丸一日海で遊んだり、終電も気にせず、どなたかのお宅にお邪魔して飲んだりするのは、より語り合う内容の密度が濃くなり、また、距離が近くなるような気がします。
住む場所が変われば遊び方も変わる
東京の友人にはいつもこんな風に聞かれます。
「島で何して遊んでるの?」
「泳いだり、友達の家で飲んだりとかかな」
「それだけって飽きない?」
東京生まれの私は、バーやレストランなどの遊び場がない場所に住むことなど初めて。けれど、ここに住んで二年近く。ちょこちょこ島外に出て遊んでいるからでもあると思いますが、私は今の環境に飽きていません。
綺麗な景色があり、友人がいて、好きなことができる。
若い頃は、「もっと『上』に行かなきゃ」「もっといいものを手に入れなきゃ」とどこかで思っていた所もありましたが、今は、それ以上のものがどうして必要なのかと、あの時、焦っていた自分に少し可笑しくなったり。
加計呂麻島の湾の凪いだ海のようななめらかな心持ちを、私は今ようやく手に入れています。